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小雪さんと一緒に学ぶ「子宮頸がん」の正しい知識と予防方法

このインタビューは2024年9月10日に実施されたものです

ESSE online

小雪さんと一緒に学ぶ「子宮頸がん」の正しい知識と予防方法 小雪さんと一緒に学ぶ「子宮頸がん」の正しい知識と予防方法

女性にとって身近な子宮頸がんについて、どんな病気か知っていますか?

今回、俳優の小雪さんが、子宮頸がんに詳しい産婦人科医の高橋幸子先生に子宮頸がんの症状や診断、治療、予防方法について質問。高橋先生に詳しく教えてもらいました。

なお、小雪さんにはちょうど子宮頸がん予防について検討を始める年代の娘さんがいるため、「娘を守るためにも、正しい知識を教えてほしい!」と前向きな姿勢で対談に参加してくれました。

対談者

小雪さん

こゆき
小雪さん

1976年12月18日生まれ、神奈川県出身。1995年から雑誌の専属モデルやショーで活躍し、1998年俳優デビュー。映画「ラスト・サムライ」「嗤う伊右衛門」「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ「わたし出すわ」「信さん 炭坑町のセレナーデ」「杉原千畝」「桜色の風が咲く」、ドラマ「不毛地帯」「大貧乏」「トップリーグ」「全裸監督」「ブギウギ」「スカイキャッスル」ほか多くの作品やCMなどに出演。

高橋 幸子先生

たかはし さちこ
高橋 幸子先生

埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科助教。サッコ先生の愛称で年間160回もの性教育の講演を行う。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトル・モア)など。

子宮頸がんってどんな病気?

小雪さん、高橋幸子先生

高橋先生

本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、小雪さんは子宮頸がんについてどのようなことをご存知ですか?

小雪さん

今回、子宮頸がんの疾患啓発活動に関わらせていただいたことで「自分自身はもちろん娘のためにも関心を持つ必要がある疾患なんだ」ということを知りました。
デリケートな話ですが、母という立場として考えていく必要があると感じています。子宮頸がんは若い世代でも発症し、予防できるがんだと聞きますので…

※HPVワクチンと検診で子宮頸がんを100%予防できるわけではありません。

高橋先生

そうなんです。子宮頸がんは発症年齢のピークが若く、子宮頸がんになる前段階の上皮内がん※1を含めると約38%が20~30代で罹患しているんです
発症年齢のピークが女性の出産年齢と重なり、子育て世代の母親が子どもを残して亡くなるケースもあることから「マザーキラー」とも呼ばれています。統計によると、日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんに罹患し、年間約3000人が亡くなっています※2

女性の出産年齢における
年齢別子宮頸がん罹患率(2020年)

女性の出産年齢における年齢別子宮頸がん罹患率(2020)

厚生労働省 人口動態統計 確定数 2020年 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録) 全国がん罹患データ(2016年~2020年)より作図

※1 がん細胞が臓器の表面をおおっている上皮にとどまって、その下の組織に広がっていないがんのこと
※2 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2016~2020年)/全国がん死亡データ(1958年~2022年)

子宮頸がんについてもっと知る >

小雪さん

若い世代の罹患率に驚かれる方は多いんじゃないでしょうか? これから結婚・出産を迎える年代で、仕事もがんばっていらっしゃる方も多い年代ですよね。子宮頸がんがこんなにも若くしてかかる病気だということは多くの若い女の子たちも知らないのではないでしょうか。自分には関係のない病気だと思わず、もっと関心をもたなければならないと改めて感じます。先生、子宮頸がんの原因について教えてください。

小雪さん

高橋先生

子宮頸がんはおもにヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因なのですが、このHPVはヒトの皮膚や粘膜に存在するごくありふれたウイルスなので、性交渉の経験がある女性ならだれにでも感染する可能性があるんですよ。

子宮頸がんの原因についてもっと知る >

小雪さん

そんなに身近なウイルスなんですね。

高橋先生

ただ、子宮頸がんを引き起こすリスクの高いHPVに感染しても、必ずがんを発症するわけではありません。もともと身体に備わっている免疫機能が働いて、ほとんどが身体の外に出されますから。
がんになるのはウイルスが出しきれず残ってしまったときで、一部残ったウイルス感染が続くと、細胞が異常な変化を起こしてがんの前段階の状態になってしまうんです。
前段階には「高度異形成※3」と、そこからもう少し進んでしまった「上皮内がん※1」がありまして、この段階ならまだ、ウイルスがいなくなれば正常な細胞に戻る可能性があります。ただ、ここで見つけられず時間が経過してしまうと、異常な細胞が数年~数十年かけてがん化し、子宮頸がんとなってしまうのです。

表:上皮細胞 | 正常→CIN1 - 軽度異形成 - 性交渉によるHPV感染(多くの場合、ウイルスは自然に排除され正常に戻る)→CIN2 - 中等度異形成 - 約10%が持続感染(多くの場合、ウイルスは自然に排除され正常に戻る)→高度異形成(がんに進まないものもある)→上皮内がん(がんに進まないものもある)→がん化(浸透)| 正常なほど - 消失しやすい~がん化にいくほど - がん化しやすい

※上図、画像の右側が見切れている場合は、右にスクロールすると続きをみることができます

以下参考に作図:笹川 寿之 臨床と微生物 2009; 36(1): 55-62./病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 141./日本婦人科腫瘍学会.患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん 治療ガイドライン第3版(2023年)

※3 異常な細胞が上皮の2/3以上になること

子宮頸がんの症状や診断・治療は?

高橋先生

小雪さん

子宮頸がんになると、どんな症状が出るのでしょうか?

高橋先生

個人差はあるものの子宮頸がんは初期症状がほとんど出ないため、なかなか気づきにくいんです。子宮頸がんが進行すると性交渉の時の出血や不正出血などの症状がみられるので、もしこうした症状を自覚したら早急に医療機関を受診する必要があります。

子宮頸がんの症状についてもっと知る >

小雪さん

初期症状がほとんどないというのは不安ですね。「子宮頸がんである」と診断されたら、どんな治療をするのでしょうか?

高橋先生

患者さんの年齢やがんの進行具合(ステージ)によっても変わりますが、手術、放射線治療、抗がん剤(化学療法)のいずれかを行うか、複数を組み合わせて行うことになります。
また、状態によっては手術を行うことになりますが、「高度異形成」や「上皮内がん」の段階なら子宮の一部のみを切除する「円錐切除術」で取り除くことができます。円錐切除術なら子宮を温存できるので、妊娠や出産の可能性を残すことができます。

子宮頸がんの治療についてもっと知る >

小雪さん

がん検診を受けて、早期に発見・治療することも大切だと思いますが、予防することもとても大切になってきますね。

小雪さん

子宮頸がんはHPVワクチン接種と定期的な検診で予防ができる

※HPVワクチンと検診で子宮頸がんを100%予防できるわけではありません。

小雪さん、高橋幸子先生

小雪さん

わが家には娘がおります。娘の将来を考えると体を大切にしてほしいですし、娘の健康を切に願っています。子宮頸がんの詳しい予防方法について教えてください。

高橋先生

子宮頸がんの予防方法として覚えておいていただきたいのは、まずは1次予防としての「HPVワクチン接種」ですね。対象年齢になると、自治体によって時期は異なりますが定期接種の案内が届くと思います。
先ほどお伝えしたとおり、子宮頸がんのほとんどは性交渉によって感染するHPVというウイルスが原因となりますので、セクシャルデビュー(初めての性交渉)前の年齢である10代の早いうちにHPVワクチン接種をしていただくことが有効な手段だと考えられます。もちろん、セクシャルデビュー後でも一定の効果はあります。

HPVワクチン接種についてもっと知る >

小雪さん

HPVワクチンの定期接種の対象年齢は小学6年生から高校1年生相当までと聞いています。先生のお話を伺っていると、やはりHPVワクチン接種という選択肢があることを読者の皆さんを含めて広く知ってほしいですし、適切な時期に接種するためにも、正しい情報を得ておくことが大事ですね。

小雪さん

高橋先生

そうですね。ワクチン接種は、娘さんを子宮頸がんから守るための1つの大切な機会となります。ぜひ、前向きに検討してください。
それと、忘れてならないのは「定期的な検診」という2次予防です。先ほどもお伝えしましたが、子宮頸がんは初期症状がほとんどないと言われていますので、定期検診で見つかることも本当に多いんです。検診でがんになる前の段階で早期発見できれば子宮を温存できる可能性も高まりますし、なにより命を守ることにつながります。

子宮頸がん検診についてもっと知る >

小雪さん

HPVワクチン接種に加えて定期的な検診はかなり重要な予防方法になりますね。将来、娘には私から定期的な検診の大切さについてきちんと説明していきたいと思います。

高橋先生

ぜひそうしていただきたいです。20歳以上の女性に対して定期的な子宮頸がん検診が推奨されていますので、ぜひとも母娘で一緒に受診していただきたいですね。

子宮頸がん予防について気軽に医師に相談を

小雪さん

小雪さん

先生、詳しいお話ありがとうございました。読者の皆さんも娘さんのHPVワクチン接種の時期が来る前に読まれている方もいらっしゃると思いますが、10代からのHPVワクチン接種と20歳を過ぎたら加えて定期的な検診の重要性を理解できました
HPVワクチンの接種についてじっくり検討していただきたいです。定期的な検診を受けることが大切であることは、子どもだけではなかなか理解が難しい話だと思います。20歳になったら親子で一緒に検診というのも一つの方法かもしれませんね。

高橋先生

そうですね。子宮頸がんの予防についての詳しいことは、我々医師に相談していただければと思います。お1人お1人にとって1番良い選択ができるように納得できるまでサポートしますので、身近な相談相手だと思って頼っていただければと思います。
何か他の予防接種や受診のタイミングで病院に行かれたときに、気軽に医師に相談してみていただくのもよいですね。

小雪さん

はい。大切な家族を守るためにも、医師に相談させていただきたいと思いますし、読者の皆さんも医師へのご相談を検討される機会にしてもらえると嬉しいです。先生、このたびはありがとうございました。

高橋先生

こちらこそ、ありがとうございました。

小雪さん、高橋幸子先生

ESSEonline 2025年5月掲載

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高橋幸子先生

監修

高橋 幸子先生

埼玉医科大学
医療人育成支援センター・
地域医学推進センター/産婦人科助教

「あかちゃんはどうやってできるの?」
早いお子さんなら2~3歳くらいから聞かれることがあります。
「あなたが生まれてくるために必要だった”子宮“という大切な臓器があってね。そして、守る方法があるんだよ。」
子どもが思春期に入っても、こんな会話がお子さんの自己肯定感を高め、自分の身体、性について語り合いやすい、トラブルがあった時に相談しやすい環境を作ることにつながります。
子宮頸がん予防は、10代から始めることが可能です。自分の身体を守ること、健やかに生きていく方法を、親子で話すことはとても大切ですね。
子宮頸がんについて、HPVワクチンのこと、検診について、不安や疑問があれば、私たち専門医を訪ねてきてください。