「高リスク型」のHPVに長期間感染すると、がんに進行する可能性がある異常な細胞が増えていきます。
この状態を「異形成」といいます。「異形成」にも程度があり、軽度の場合は自然に治ることが多いのですが、異常な細胞が増えた高度の「異形成」では子宮頸がんに進行する可能性が高くなります。
子宮頸がんの最初の段階を上皮内がんといい、がん細胞は子宮頸部の表面(上皮)にとどまっています。上皮の下の基底膜をこえてがん細胞が広がると、浸潤がんと呼ばれ、転移を起こしてくる可能性があります。
子宮頸がんは、がんになる前や早い段階で発見されれば子宮の摘出手術などをせずに、子宮を残すこともできます。
子宮頸がんを発症した場合、上皮内がんの段階で見つかれば、円錐切除という子宮頸部の一部を切除する手術で治療することで子宮を温存でき、その後の妊娠出産が可能です。しかし妊娠するまでの期間が長くなる可能性や、早産や低出生体重の可能性が高くなるなどの報告もあります。
がん細胞が基底膜をこえて広く浸潤している場合は、子宮を摘出する手術を行うか、放射線治療を行います。手術の場合は子宮を周囲の組織と一緒に切除し、骨盤の中のリンパ節の摘出も必要になります。
放射線治療はとくに手術での治療が不可能なⅢ期、Ⅳ期を中心に行われます。最近では抗がん剤を併用した放射線治療が行われています。抗がん剤による化学療法は主として再発したがんに対して行われています。
子宮頸がんやその前がん病変の治療により、様々な後遺症を生じることがあり、学業、仕事、恋愛、結婚、出産、育児、など女性の人生に大きな影響を与えます。



普段から女性に接する仕事をしていたため、3年前に勉強のつもりで婦人科がんについてのセミナーに参加したことがありました。
「手術で子宮をなくして子供が産めなくなってしまう事以外は、普段の生活に戻れる」というイメージだったので、排便・排尿障害のことやリンパ浮腫などの後遺症などと一生付き合っていかなくてはいけないという事実を初めて知りました。また、膣の一部も切除するため性交渉もスムーズにいかなくなるという話には衝撃を受けました。
実はその婦人科がんのセミナーを受講した3日後に、がん検診を受けた病院から突然連絡を受けました。つい先日、他人事のように聞いてきた後遺症などの症状が自分の身におきるかもしれないと、目の前が真っ白になりました。
その当時は、初めての結婚記念日を迎えて間もない頃でした。孫を楽しみにしている主人のご両親はどう思うだろうか、性交渉の後遺症を抱える私を女性として主人は受け入れてくれるだろうか、などいろいろ考えました。実家の母からは、離婚して実家に戻り、地元の病院で治療をするように言われました。
0期の診断を受け、円錐切除術を受けたのちは経過観察となりました。私の場合は切除部分が広範囲だったこともあり無事に出産するには子宮口を縛る手術や入院が必要なことは、産婦人科医師から説明を受けました。また、術後は頸管粘液が弱まり、出血しやすく、いまでも性交痛が続いています。
普段から若い世代の女性とお会いする機会が多いのですが、子宮頸がんの検診や予防の話をしても自分には関係ないと思っている方もいらっしゃいます。罹患率の高い20~30代の女性患者さんには独身の方も多く、様々な後遺症を抱えて結婚はもちろん恋愛すらできなくなってしまう人もいます。自分の体を守るということは、女性としての幸せの可能性を守ることだけでなく、自分の大切な家族、まわりの人の幸せを守ることだと感じています。そのためには予防と早期発見・早期治療はとても大切だと思います。





※出産を望まない症例や高齢者にも、子宮摘出が行われる場合があります。